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嫉恋

第17章 悲しみの結末




キャラバンを隔てた先で円堂たちが練習している。ワイワイと騒ぐ声は僕を救ってくれた大事な仲間。吹雪は目の前に立つ少女を見ている。少しの沈黙の間、吹雪は花織をじっと見つめていた。意志の強い目と綺麗な黒髪。他の誰かを好きでありながら、自分を見ていてくれた優しい人。

「もう、悩んでないね」

吹雪が黙って花織を見つめていると花織はクス、と微笑んで吹雪に言った。

「すっきりした顔してるよ、士郎くん」

花織の言うとおり、今まで悩んでいたことが嘘のように吹雪の表情は明るかった。彼の首元にマフラーが無いのが何だかとても新鮮だ。吹雪は花織の言葉に大きく頷いてみせる。

「うん、もう大丈夫。ちゃんとわかったんだ、僕は一人じゃないんだって」

吹雪はそっと自分の左胸に触れた。僕の周りには僕を支えてくれる仲間がいて、ここにはずっとアツヤがいてくれる。もう寂しくはない。やっと前を見て進んでいける。でもそれができるのもこの目の前にいる少女の助けがあったからかもしれない。

「花織さん、ありがとう」

吹雪が花織を見据えて微笑んだ。その微笑には今までにない穏やかさがある。

「ずっと僕の傍にいてくれて。僕の手を握っていてくれて、僕の名前を呼んでくれて……」

ふわふわと風が吹雪の髪を揺らす。今ならわかる、たとえ彼女の一番が他の誰かだったとしても。彼女が傍にいてくれたことでどれだけ自分が救われていたか。彼女が直接の打開のきっかけになったわけではない。でも彼女がいたから吹雪士郎でいることができた。

「君がいてくれたから僕は、ここに居られた。……君には感謝してもしきれないよ」
「私は何もできなかったよ。……全部は士郎くんが頑張ったから解決したこと。私は仲間として当然の事しかしてないもの」

花織はそう言いながら髪を耳に掛ける。確かに花織が吹雪のためにできたことはほとんどない。ただ傍に寄り添って、話を聞いた。それだけだ。でもそれこそが彼の心が完全に壊れるのを踏みとどめたのかもしれない。何にせよ、吹雪にとってみれば彼女は重要な人物であるということには変わりない。

花織は急に思い出したように鞄のファスナーを開いた。その一番上に入っているものを取り出す。そしてそれを何も言わずに吹雪に手渡した。
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