第2章 想いのすべて
「もう!怪我してたならどうして言ってくれないの?」
怒り口調で秋が風丸の足を冷やしながら言う。彼は左足を痛めていたらしい。染岡は右足首、壁山は背中にそれぞれ怪我をしていた。
「だって、報告するほどの事じゃなかったし……」
「動けない皆の分まで俺たちが頑張らなきゃならねえのに……クソッ」
入院している皆の分まで頑張りたい、きっとそれが理由なのは秋にも十分わかっていた。この三人の選手には分からないほどに僅かに顔を顰める。その気持ちは痛いほどよくわかっている。
「ひとりでも多くの力が必要だと思ったんだ」
秋は蒼髪の彼を見て、切なく目を細めずにはいられなかった。そして、花織も気が付いていた。きっと、先ほど手渡されたアイシングは風丸の分だったのだろう。一人分しか用意されていなかったから、彼女はこの三人全員の怪我に気づいていたわけではないようだ。だとすればこれは誰のものか、そう聞かれれば答えはひとつだけだ。風丸一郎太、彼女が最も気に掛けている人の為に用意されていたものに違いない。
「風丸くん、花織ちゃんが心配してたよ」
「え……?」
じっとフィールドから視線を逸らさないでいた風丸が秋の言葉に目を瞬かせる。そして再び、視線を試合の方へ戻しながら秋の言葉に返答した。
「……気づいてたのか?花織は」
「多分。前半が終わる前に花織ちゃん、どこかに行ってたの。戻ってきたときにはアイシングを持ってた。……気づいてたと思う、風丸くんの怪我に。それに試合に出るって言ったのも多分そのせいなんじゃないかな。風丸くんの代りをするため……」
「……」