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嫉恋

第16章 交錯する想い




吹雪はかつて練習を行った河川敷のグラウンドへとやってきていた。グラウンドでは幼い子供たち、おそらく小学生低学年くらいの子どもたちがサッカーをしている。それをぼんやりと立ち尽くしながらそれを眺めていた。

皆成長している。キャプテンたちはデスゾーン2を会得したし、立向居はムゲン・ザ・ハンドのヒントを掴んだみたいだ。他の皆だってどんどん精度を上げている。

本当は僕だってサッカーがやりたい。でもボールを蹴るとアツヤが出てきてしまう。アツヤになってしまえばいいのかもしれない。でもそうすれば僕はどうなるのだろう。

……アツヤさえいなければ。

僕は吹雪士郎としてサッカーができる。こんなに苦しまなくてもいいのかもしれない。

そのとき、背後の草むらが揺れた。テンテン、とボールの転がる音がする。吹雪が不思議に思って振り返ってみるとサッカーボールが自分の足元に転がっていた。

「すいませーん、ボールとってもらえますかー!!」

そこから遠く離れた場所で男の子が二人、こちらに手を振っている。どうやらこのボールを吹雪に取ってほしいらしい。可愛いな、と吹雪は思いながらボールを拾い上げる。そしてそのボールを彼らの元へ投げようとした瞬間、二人の姿が過去の自分と重なった。

昔、アツヤが変なところに蹴ったボールをこうやって取ってもらったりしてたっけ……。

「あのー!!」

懐かしい情景が頭の中を巡っていた。ぼうっと硬直していたのを男の子たちは怪訝に思ったらしく吹雪を大きな声で呼ぶ。吹雪は男の子の声に我に返って、ごめんごめんと謝った。ボールを上手で投げ、彼らに渡す。去っていく男の子の後姿にアツヤの面影を見た。

「アツヤ!」

思わず手を伸ばしてしまう。しかしそれはやはり幻覚で、彼の弟はもうどこにもいない。この世のどこにも。その事実を噛みしめて吹雪は何度でも絶望する。

「やっぱり無理だよ……、アツヤを追い出すなんて」

吹雪はマフラーと一緒に自分の左胸を握った。あの事故以来、ずっとアツヤをここに宿して生きてきた。一人ぼっちで苦しむ僕を僕の中のアツヤが支えてくれた。そのアツヤを追い出すなんてできない。二度もアツヤを殺せない。僕の大切な弟を。

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