第16章 交錯する想い
「おいおいやめろよ。鬼道さん、一応振られてるんだぜ。鬼道さんが雷門に行く前からお気に入りには雷門に彼氏がいたんだと」
「えーっ、鬼道さんドンマイですね」
辺見がにやにやとしながら場を宥め、洞面がくすくすと笑いながら鬼道をからかった。鬼道は少しムッとした様子でふたりに詰め寄る。花織は呆然とその様子を見守っていた。何だか変な感じがする。あんなに近寄りがたかった帝国イレブンはこんな話をしたり、鬼道をからかったりするのかと。
「月島」
花織は名前を呼ばれて振り返る。そこには松葉杖をついた佐久間と、源田の姿があった。花織は少しドキリとする。彼らに話しかけられるのはあの一件のせいで少々警戒せずにはいられなかった。
「あの時は悪かった。……本当はあんなこと、思ってもなかったんだ。ただあの時はおかしくなってた。お前に酷いことを言ってしまった」
「……佐久間さん」
花織はあの時鬼のような形相で花織を糾弾した佐久間が、優しく自分に語りかけてくれることに安堵した。言葉のとおり、もう花織を鬼道を誑かしたとは思っていないらしい。源田も佐久間に続けて言う。
「元々、鬼道が勝手にお前に惚れこんでいたということはチームの皆、知っていた。何しろチームで持ちきりの話題だったからな。そのせいで可能性としてはないのではないかと思い込んでしまった」
「え?」
源田があっけらかんと放った衝撃の事実に花織はきょとん、と目を点にする。花織と鬼道についての話題は帝国イレブンにとって日常茶飯事だったというのか?花織は鬼道を見た、鬼道はまだ辺見と洞面を説教するので忙しいらしい。
「鬼道の恋を応援する会、なんてのも立ち上がったくらいだしな」
「初心な鬼道がお前を見つめる様は中々面白かったんだ」
なんと、鬼道の恋心は帝国イレブンにとってみれば面白いおもちゃと同列だったらしい。花織は思わず吹き出してしまう。自分たちの行動一つ一つが話題になってしまったことは正直とても恥ずかしいが、自分を嫌悪しているのではないかという疑惑が晴れて花織は初めて彼らに対して屈託のない笑みを見せた。