第16章 交錯する想い
そう、鬼道は現在帝国学園の深緑色のユニフォームを身に纏い、赤いマントを羽織っている。それは花織が去年の一年間ずっと追い続けていた姿だ。花織が焦がれていたそのままの鬼道がこの場所にいると、何だか帝国にいたころに戻ったような感覚だった。
「フッ、そうか。まあ、お前はこちらの俺の方が見慣れているだろうからな」
鬼道の不敵な微笑に花織は胸の中でちりりと燻る様な感覚を感じる。ああ、本当にあの頃に戻ったみたいだ。ただあの頃と違うのは花織の中にある感情だ。きっとあの頃の花織なら鬼道の言葉に息ができなくなるほどのときめきを感じていたに違いない。今心の中にある燻るこの気持ちは、おそらくその名残なのだ。
「行こう、後半が始まる」
「……」
鬼道が花織を連れ、下のフィールドへ降りようと声を掛ける。だが花織はなんとも言わずフィールドに戻るのを渋った。鬼道は始め、彼女がまだこの場所にいることに懐かしさと名残惜しさを感じているのだろうかと思った。だが彼女の表情を見るにそれは違うようだ。花織はどうやら下に降りたくないらしい。
「どうしたんだ、花織」
鬼道が花織の肩に触れる。花織はふいと鬼道から視線を逸らした。花織は今まで考えない様にしていたことを口にする。
「……帝国の選手にとって、私って目障りな存在だったんでしょうか」
花織は、それこそもう帝国学園とは関わらないと思っていたから今まで気にしない様にしていた。だが今日ここへ来てしまって、帝国の選手たちが来ると知ってハーフタイムになって逃げるようにこの場所へ駆けこんでしまったのだ。理由は真帝国学園の一件での佐久間と源田の言葉にある。
鬼道を誑かした女として花織を嫌悪するような言葉の数々。あの時は源田と佐久間の気持ちを汲むのに必死で何も思わなかった。でも今日、ここへ来るときふと思ってしまった。自分は帝国イレブンにとって邪魔な存在だったのではないかと。
佐久間と源田に花織はあれだけ辛辣な言葉を掛けられた。たまたま佐久間と源田だっただけで他のメンバーだってそう思っていたかもしれない。