第15章 砕氷の時
吹雪が心配か、花織は豪炎寺の問いかけに対し真面目に考える。心配だ、とても。その気持ちに嘘はない。
「……うん、心配だよ。仲間だもの」
「風丸と、どっちが心配だ?」
どくん、と花織の胸が騒いだ。思わず豪炎寺から目を逸らす。花織の中ではその問いかけには明確に答えが出ている。即答できた質問だ。それでも口にするのはどうしても憚られる。いくら事実だとはいえ、どちらかなど答えられない。
「……そんなの、答えられないよ」
「花織」
花織がか細い声で豪炎寺を見ないで言う。豪炎寺は花織を呼んだ。花織の肩を掴んで振り向かせる。そしてじっと花織の目を見据えて彼は話した。
「お前にとって誰が一番大切で、誰が一番心配なのか。それがはっきりとしていて何が悪い。誰に何を言われようがそれは事実だろう」
豪炎寺には優先すべきものがある。すべてを同時に救おうなどとはきっと彼は考えない。現に彼は以前は妹の為にサッカーをやめた。今回は妹を人質に取られ、それを守るためにチームから離れた。花織が誰よりも風丸を大事に思うのにはそれと何か大差あるだろうか。
「……お前は鬼道を振ったんだろう、お前がずっと好きだった鬼道を受け入れなかったのは何故だ?風丸が誰より好きだったからじゃないのか?」
「っ……それは、そうだけど」
花織は鬼道を振った、という豪炎寺の言葉に動揺した。豪炎寺が彼が去った後の、鬼道と風丸しか知らないはずのことを知っていることに驚いたのと、豪炎寺からそんな言葉が飛び出したことが意外すぎた。花織は豪炎寺から目を逸らそうとする、だが豪炎寺は花織を逃がさなかった。真剣な顔をして花織を見つめている。