第15章 砕氷の時
「それで、どうしたんだ?」
「え、と……」
「俺でよければ話を聞く。……誰かの悩みを解消したいと思う人間がそんな顔をしてたんじゃ、誰の悩みも解決できない」
花織は俯いて豪炎寺から視線を逸らした。全くその通りだと思った、豪炎寺の言うことは正しい。これからの事を考えても花織が1人で悩みを抱えたままでは、きっとチームに入らぬ迷惑が掛かるばかりだ。
花織は再び豪炎寺の横に腰を下ろす。そして吹雪に言われた言葉、そして自分の気持ちを彼に話した。
「吹雪くんのこと、知ってる?」
「話には聞いた」
「そっか」
花織は豪炎寺に包み隠さず自分の気持ちを話してしまうことを決めた。花織にとって豪炎寺とは何よりもサッカーに対して真摯で、そして公平な人だ。きっと彼ならば花織に対して正当な評価を下してくれるだろう。
花織にとって風丸のいない今、もっともよき理解者となるのは間違いなく鬼道だが、何せ鬼道は花織に甘いのだ。絶対に花織を庇う評価しかしないし、何より鬼道に風丸絡みの内容を自分から話すのは気が引ける。
「……私、吹雪くんの悩みを知って彼の力になりたいと思った。チームメイトとして、マネージャーとして彼の力になれたらって思った。……でも私、無意識のうちに一人悩む吹雪くんの姿を一郎太くんと重ねてた」
花織は膝を抱えて顔を埋める。豪炎寺は何も言わない。
「私、もちろん吹雪くんの力になりたいって思ってる。でもそれだけじゃなくて吹雪くんの力になりたいって言う気持ちの根底に一郎太くんに対する想いがあったの。彼が戻ってくる場所を守りたい、彼の為にチームを守りたいって思い」
花織を知る者ならば容易に想像ができる内容だった。花織はいつだってそうだ、自分の大切な人が一番になりがちなところがある。悪くはないことだが、チームのマネージャーとしては少々問題だ。今まではそれをカバーするほどの行動力があったから問題にはならなかった。
「それを吹雪くんに指摘されたの。"お前が心配しているのは、吹雪士郎じゃない"って。私の気持ちは、吹雪くんを益々傷つけてた」