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嫉恋

第15章 砕氷の時




「豪炎寺くん。……キャプテンと話してたんじゃないの?」

花織は座り込み、膝を抱えたまま首を傾げた。数十分前にテントを抜け出した際、キャラバンの上から円堂と豪炎寺の声が聞こえた。久しぶりだから積もる話もあるのだろう、花織はそう思い邪魔をしない様にとこっそりテントを出て、キャラバンから少し離れた場所に腰を下ろしていた。

「アイツはキャラバンに戻ってる。先刻、誰かがテントから出ていく音が聞こえて気になった。……多分、花織だと思った」
「ふふ、豪炎寺くんは耳がいいんだね」

豪炎寺の言葉に花織は表情を綻ばせた。フットボールフロンティア決勝戦の数日前、学校で合宿をしたときも花織は抜け出しを行っていた。その時もこんなふうに豪炎寺に見つかって彼が声を掛けてくれた。彼女はそれを思い出したのだ。

「隣、いいか」
「うん、どうぞ」

花織の隣に豪炎寺が腰を下ろす。当たり前のことだが、豪炎寺と話すのは久しぶりだ。先ほど鬼瓦刑事から話を聞いたのだが、豪炎寺はエイリア学園に妹を人質に取られ、脅迫されていたらしい。だからチームを離れ、沖縄の土方の元で身を隠していたのだと聞いた。きっと孤独で、辛い戦いだったに違いない。

「豪炎寺くん」
「なんだ?」
「お帰りなさい。豪炎寺くんがチームに戻ってきてくれて嬉しいよ」

抱えている膝に顔を付け、豪炎寺を覗き込みながら花織が言う。豪炎寺は一瞬きょとんとしていたが、フッと口元に笑みを浮かべた。静かな海が二人の眼前に広がっている。空には大きな月が浮かんでいて、水面をキラキラと輝かせている。波の音が潮風と共に頬を撫でた。

「……豪炎寺くんはずっとひとりで戦ってたんだね。それでも豪炎寺くんは戻ってきてくれた。豪炎寺くんを悩ませていたこともちゃんと解決して……、だから凄く嬉しいんだよ」

花織は海を眺めながらぽつりぽつりと呟く。そう、豪炎寺は戻ってきてくれたのだ、以前よりも遥かに強くなって。花織はその事実に彼のことを思った。彼もきっと戻ってきてくれるはずだ。決して強くなっていなくてもいい、ただいつも通りのあの頼もしい笑顔を浮かべていてくれれば。

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