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嫉恋

第15章 砕氷の時




砕け散った氷が空を待った。彼の目の前には信じられない光景があった。エターナルブリザードが止められている、片手で軽々と、今までどんなゴールもこじ開けてきた完璧だった必殺技。それがいとも容易く止められている。

「そんな……、バカな」

目の前で起こったことに吹雪の声は動揺を隠しきれなかった。全身がぶるぶると震えているのが分かる。目の前に立つ、今まで自分が破れなかったゴールキーパーはボールを片手でつかんだまま、不愉快そうに吐き捨てた。

「楽しみにしていたのに、この程度とはな」

ゴールキーパーはボールを放り捨てる。そして吹雪に背を向けて目を逸らし、吐き捨てるようにその言葉を口にした。

「お前はもう必要ない」

その言葉にどれだけの衝撃が走ったのか、吹雪自身にもわからなかった。感じたことの無い様な衝撃、雪崩に襲われてそして目が覚めてすべてを知った時に感じた衝撃によく似ているものが全身を駆けた。

世界が揺れ、視界が黒く染まってゆく。身体が指先から冷えていくのがわかった。しかし身体は動かない、吹雪の中では必要ない、という無慈悲な宣告が何度も何度も繰り返された。二つの人格が彼の中で動揺していた。

士郎としても必要ない、アツヤとしても必要ない。

自分の存在意義を否定された。吹雪士郎もアツヤも必要のない人間だ、だったらなんでここに自分はいるんだ。吹雪士郎もアツヤも必要ない、だったら自分はいったいなんなんだというのだろうか。自分、というものに亀裂が入ってゆく。そしてそれはガラスをたたき割ったように粉々に崩壊した。

その衝撃に彼は咆哮した。叫びは心の中にうち止められ、誰にも届くことは無い。

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