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嫉恋

第14章 喪失の余韻




(そんなの、上辺だけならなんとでもなるだろ。あの女だって選手の端くれだ、俺の力が必要なことなんてとっくに理解してるさ)

「でも、花織さんは……、僕に笑い掛けてくれる、心配もしてくれる」
(いい加減に現実を見ろ、士郎。あの女が心配してるのはお前の事じゃない)

ハッと吹雪は目を見開く。心の中のアツヤに図星を付かれたのが痛かった。わかっているのだ、彼女が心から心配しているのは自分ではないことぐらい。自分は誰かと重ねられて心配や笑顔を向けられているのだと。

(あの女が本当に心配なのは風丸だけだ。お前だってわかってんだろ、お前が"風丸と同じように"悩むから心配されているだけだって。お前自体は心配されてないんだよ)

気付いていた、でも見ない様にしていた。花織が自分の先に見ているもの、彼女は吹雪を見てくれているようできっと見ていない。

確かに僕を心配して一緒に寄り添っていてくれたり、笑い掛けてくれたり、そんな彼女の存在に僕は救われているけれど。

知ってる、君が僕に隠れて一人で泣いていること。頻りに携帯電話を気にしていること、いつの間にか彼女の胸元で輝くようになったペンダントを眺めていること。全部僕たちの前では見せない彼を想う行動。彼女を好きだからその位簡単にわかってしまう。

君が僕の中に、助けられなかった風丸くんを見ているって事。

その想いが、花織に対して本心を零すことを踏みとどめている。

「士郎くん」

花織の声が聞こえた。いつものように士郎を呼ぶ声、士郎は返事をしようとした。だが先ほどアツヤに指摘された現実が胸を掠めて声が出ない。そう思った瞬間、彼の意識はもう一人の自分によって支配されていた。花織は吹雪の目を見てぴくりと眉を動かした。吹雪の瞳はいつもの穏やかな色を宿していない、オレンジ色の瞳を炯々と輝かせている。

「またお前か」
「士郎、くん……?」

花織の表情に緊張が走る。アツヤはじっと少女の顔を見つめた。士郎が焦がれ、縋りたいと思っている少女。どこまでも底抜けに優しくて、それが士郎を傷つけていることを知らない女。
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