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嫉恋

第14章 喪失の余韻




「だって、一郎太くんがサッカーを嫌いになったわけじゃありませんから。それに私、一郎太くんが戻って来るって信じてます。彼が戻ってきたときに彼を温かく迎えるのが恋人の役目でしょう?」

花織は初めてヒロトに微笑んだ。ヒロトはその表情に心打たれる、一点の曇りなく真摯に向けられた大切な人への想い。その人のためなら何でもできるという明らかな決意が口調から見え隠れしていた。ヒロトと同じ信念だ。

「それに私、彼と一緒に走るのが大好きですから。私が走ることをやめてしまったら彼と同じ場所を共有できない。それだけは嫌なんです」

花織はヒロトに断言する。ヒロトはそんな花織を見てフッと表情を緩めた。目を伏せ、そしてまた顔を上げる。そして質問を続けた。

「君はその人のためなら何でもできるかい?」
「私にできることなら」
「……そうか」

ヒロトは頷いた、彼の中で何か強い決意が新たに芽生えたようであった。月明かりに照らされる彼の表情はそんな感じがする。花織はヒロトに質問の意図を問いかけようとした、それだけではなく彼には聞きたいことが一杯ある。今日言いかけた豪炎寺の事、エイリア学園にはいくつのチームが存在するのか、そしてなぜ花織の前にたびたび姿を現すのか。だがそれを遮る様にヒロトが一方的に花織に言葉を掛けた。

「君は本当にその人のことが大切なんだね。俺と同じだ、俺も大事な人のためなら何でもできる。本当に、何だってね」

何か特別な想いを感じさせる瞳でヒロトは呟く。何でもできる、その言葉には強い思いが込められているように感じた。花織はヒロトさん、と彼の名前を呼ぶ。ヒロトはそれじゃあね、と手を振って花織の前から姿を消してしまった。花織はヒロトの足跡の残る砂浜へと視線を落とした。

ヒロトは一体何を考えているのだろう。宇宙人の行動に理解などできないだろうが、花織は彼の残した言葉と意味深な瞳が気に掛かった。

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