第14章 喪失の余韻
花織の言葉を遮るようにヒロトが問う。花織は益々訳の分からないといった顔をしたが、反射的に握っていた携帯を持つ手に力が籠った。それだけでヒロトは彼女が自分の問いかけに肯定したことを悟る。できる限り彼女に対して優しく微笑みかけ、ヒロトは提案した。
「君が手に持っているそれ、地球の通信機だよね。確か通話と文章メッセージが送れるとか」
花織がヒロトの指摘に自らの携帯へ視線を落とす。ヒロトは続けた。
「君の近況を君の大切な人へ伝えてあげたらどうかな。……きっと君のことを彼は心配しているはずだから」
その言葉に花織はハッとした。どうして今までこんなに単純なことに気が付かなかったのだろうと。風丸は電話に出てくれない、いつも彼が電話を切ってしまう。でもメールなら、彼が気の向いたときに読んでくれるはずだ。時間が経って彼の気持ちが落ち着いたとき、彼が戻ってこようとした時に花織が近況をきちんと文章化して送っていれば彼はチームに戻りやすいかもしれない。
「……それじゃあまたね、月島さん」
花織がヒロトへと視線を戻す。だがもうそこにヒロトの姿はなかった。花織が周囲を見回してみても、彼の姿どころかヒロトがいた痕跡すら見つからなかった。花織は複雑な思いで携帯を握り締める。ヒロトは本当に花織のことを心配してここまで来たのだろうか。俄かに信じがたい、しかしヒロトが自身の気持ちを花織に訴えかけた時の声色はとても嘘をついているようには思えなかった。
ヒロトに気を許したわけではない。だが確かに花織の中でヒロトへの印象は揺らいでいた。