第14章 喪失の余韻
決定的にヒロトの中で彼女に対しての何かが変わったのは、先日の彼女の意志の強そうな瞳を見てからだ。悪戯に彼女の首を絞め、自分が花織に会いに来ているという事実を言葉無くして口封じさせようとしたあの時。彼女の恋人への危害を仄めかせた瞬間、彼女の瞳は自分に対する恐怖を捨てた。固い意志を持った瞳でヒロトを睨み、彼の腕を掴んだ。そんな彼女の瞳は彼女自身が想い慕う人のためならば何でもやりとげるだろうという思いをヒロトに感じさせた。
大切な人の目的を果たすためには手段を選ばず、その人が望むものすべてを叶えたいと願うヒロトにとって、彼女の瞳は自分と同類の瞳だと思った。
「俺は、円堂君たちに興味があって……。この間の試合は円堂君のサッカーを知りたいだけだったんだ、円堂君が楽しそうにサッカーをする姿を見ていたから」
ヒロトは自分の方を振り向きもしない花織の背中に訴えかけた。先日の雷門の試合はヒロトが言った通り、雷門中を潰すための試合ではなかった。自分の独断で他から非難を受ける可能性があったにもかかわらず円堂への、雷門中への興味を抑えきれずに行ったものだ。円堂がいう楽しいサッカーという物を体験してみたかった。彼にとってサッカーとは花織にも話した通り、大切な人にとって大事な物という認識しかなかったからだ。結果は大差でジェネシスが勝利したが、雷門にはまだまだ成長の余地と円堂を中心としたメンバーから諦めない闘志を感じた。ヒロトにとって新鮮な試合だった。
「試合の後、俺は俺の必殺技を受けて倒れた選手が心配だったんだ。……病院へ行った帰り、その時にこの場所で泣いている君を見つけた」