第14章 喪失の余韻
花織の瞳が動揺に揺れた、どうしてヒロトがそんなことを知っているのか。花織は唇を噛んでヒロトから目を逸らす。敵から恋人のことを指摘され、花織は二の句を告げなくなってしまった。ヒロトがゆっくりと花織に歩み寄る。
「君たち雷門のことはもちろん調査している。俺たちとの試合が終わった後、彼が雷門を去ってしまったことで円堂君がショックを受けていたことも。……君が夜な夜な彼を想って一人で泣いていたことも」
「……っ」
誰にも気づかれていないと思った自分の行動すら、ヒロトには筒抜けだった。花織はヒロトに何を言われるのも辛くてヒロトを振り切って逃げてしまおうと踵を返す。だがその彼女の手をヒロトは掴んだ。
「……君を傷つけるためにこんなことを言いに来たんじゃない。ただ、君が1人で泣いていることを知って、放っておけなくて」
花織の後姿にヒロトが言葉を掛ける。ヒロトもそう言いながら視線を足元へと落とした。元々、花織に対しての興味を彼は持っていた。それはサッカーを始めた境遇が自分と似ていること、そして円堂とは違う意味で人を、主に異性を惹きつける部分に対しての興味だった。そしてジェミニストームとの試合で美しいフォームでフィールドを駆けていたのも印象深い。そこまでであれば雷門の選手の一人としての認識で終わっていただろう。
だが彼女と密会するたびにヒロトの中で彼女に対する興味は強まった。前述したが彼にとってついこの間まで、月島花織という少女はただの円堂の周りにいるその他大勢の人物のひとりでしかなかった。むしろ雷門にとって異色である彼女の存在に違和感を覚えるくらいだったのに。