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嫉恋

第14章 喪失の余韻




ぽろり、と花織の瞳から静かに一粒の涙が零れた。いくら探してもこのフィールドで風丸を見つけることはできない。今までサッカーをし、見ていく中で風丸だけを追い続けていたのに、彼の姿は今どこにもない。それを実感するのが怖くて花織は吹雪の病室に通い詰めていた。練習を見ていると意識下で風丸の姿を探し、そしていないことに落胆する。それを繰り返すのが堪らなく辛かった。だから吹雪の元へ行くことでグラウンドを避け続けていた。

「花織さん」

ぽん、と肩を叩かれて花織は我に返る。ハッとして自分の名が呼ばれた方を振り向けば、吹雪が心配そうに花織のことを見つめていた。花織は俯く、吹雪の方がよっぽど辛いはずなのに吹雪に心配を掛けてしまったことが途端に申し訳なさとして込み上げてきた。

「何でもないよ。……行こう、士郎くん」

さり気なく涙を拭い、いつものように花織は吹雪に笑って見せる。めそめそしている姿を見せていたのではみんなに迷惑が掛かってしまう。花織はチームでも吹雪の前でもできるだけ気丈に振る舞って見せた。しかしそれがただ無理をしているだけだということに気づいているものは気づいている。

花織さん……。

吹雪もその一人だ。彼女の痛々しい笑顔を見つめて吹雪は心配そうに微笑み返してはみたが、内心は笑えるような心境ではなかった。風丸がこの場を去ってしまったことに対して、彼女がそんなにすぐに立ち直れるわけがないことは分かっている。そんな彼女に一体なんて言葉が掛けられるだろうか。

吹雪は自分に微笑んでくれる花織を想う。彼女が吹雪をどのようなふうに思っているのか、わかってはいるが、それを認めたくはなかった。

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