第13章 絶望に染まる
「そうだ、お前にしかできないことがあるはずだ」
「……はい」
花織は涙に瞳を潤ませながらも、やっと微笑を見せた。自分の中にあった心の靄を吐き出し、自分のやるべき事、風丸のためにできることを見つけてやっと安堵した。風丸の為にできることを、自分が今できることを成し遂げると決意した。鬼道も花織の表情が少し明るさを取り戻したのを見て柔らかく微笑む。
「やっと、笑ってくれたな」
「鬼道さん……。ありがとうございます。私、自分に出来ることをします。マネージャーとして、彼の恋人として」
決して風丸がここを去ってしまったことに対するショックが癒えたわけではない。しかし真っ暗で何も見えなかった花織の心に光が差した。鬼道が花織を救ってくれた。花織は鬼道を信頼の目で見つめた。鬼道は花織のその眼差しを受け止めながら、握った花織の手はそのままにもう一方の手で花織の頬を撫でた。
「無理はするなよ。……俺はお前の味方だ、いつでも。どんなときでもな。風丸がいない間は俺がアイツの代わりだと思って貰って構わない」
ずきん、と花織の胸が痛む。鬼道の放った言葉は、風丸が以前花織に言ってくれた言葉そのままだった。"俺が鬼道の代りになる"その鬼道が風丸の代わりになるというのはどういう巡り合わせだろうか。花織は再び何も言わずに込み上げてきた涙を流す。鬼道の言葉に風丸の存在を感じた、それが花織の心を簡単に決壊させる。
彼の喪失は花織の胸を痛ませる、きっと彼が戻ってくるまで癒えはしないだろう。
鬼道は花織の手を握ったまま、花織の髪を撫でた。愛おしげに、自分だけは絶対に花織の傍にいることを誓いながら。鬼道にはそれしかできないのだ。