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嫉恋

第13章 絶望に染まる




花織の瞳から堪えきれなくなった涙がぽろぽろと堰を切ったように零れはじめる。鬼道さん、と彼女の震える唇が何度も鬼道を呼んだ。鬼道はそっと花織の頭を抱き寄せて自分の肩に顔を埋めさせる。そして花織の髪を優しく撫でながら花織に囁き掛けた。

「安心しろ、俺はどこにも行かない。……だからいくらでも泣いて良いんだ、花織」

鬼道有人は花織の欲しい言葉を熟知していた。語弊無く、彼は花織の事なら何でも分かった。恐らく彼女の恋人である風丸よりも、花織の気持ちを知っている。だから自分への恋心を無くした花織を懐柔するのだって本当はこのくらい容易い。その位彼女のことを心から愛しているのだ。

***


三十分ほどの時間が過ぎた。ようやく花織は落ち着きを取り戻し始めているようだった。時折、込み上げてくる涙を拭いながら鬼道の手を握り締めている。彼女にとって今の支えは鬼道だけだった。鬼道に縋るのは狡い、と分かっていながらも鬼道だけが花織の頼りだった。

「一郎太くんがキャラバンを降りたの、私のせいなんです……」

ぽつりと花織がようやく核心に迫る言葉を零す。鬼道は黙って花織の手を握った。花織は鬼道の手を握ったまま、自分の胸の内を鬼道に打ち明け始めた。

「一郎太くん、ずっと悩んでいました。多分、吹雪くんがキャラバンに参加したころから、ずっと。……力が欲しい、勝てないかもしれない。そんなことを時折零してたんです。……私が初めて彼の口からそんな話を聞いたのは、染岡くんが怪我をしたときでした。あの時話を聞いて、彼の悩みが解消されたんだって……、私は思ってたんです」

しかしそうではなかった、花織は唇を噛む。風丸はずっと一人で悩み続けていたのだ。花織は一番彼の傍にいたのにそれに気づけなかった。彼は心を病むくらい悩んでいたのに。

「でもそうじゃなかった。……彼は一人で悩んでいました。私は、彼の苦しみに気づけなかった。彼に言われました"花織に俺の気持ちは分からない"って……。本当にそうだと思います、それどころか私は……」

花織の目から再び涙が零れ落ちる。それは花織の手を握っている鬼道の手の上に落ちた。
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