第13章 絶望に染まる
今回もたとえ微力であろうと助けになればと思った。きっと辛いことを話すだけでも楽になるに違いない。花織を元気づけようと花織の元へ二人は向かう。
「花織ちゃん!」
土門が花織を呼べば、花織はゆっくりと振り返った。土門は思わず口籠ってしまう、近くにいくと益々彼女は痛々しくて悲痛さに満ちていた。何と声を掛けるのが正しいのだろう。土門は思いつく言葉を述べる。
「あのさ……、元気出せよ。風丸なら絶対戻って来るさ」
「……そうだね」
花織が俯き土門の言葉に肯定する。いつもの様な明るさ、微笑は無い。今にも泣き出しそうな目をして花織は黙り込んでいる。土門は分からなかった、何を言って花織を励ませばいつもの彼女に戻ってくれるのか。今度は一之瀬が花織に言葉を掛けようとする、だがそれよりも速く二人の間に静かな声が分け入った。
「一之瀬、土門」
名前を呼ばれて彼らは振り返る。そこにはかつての彼女の想い人、鬼道有人の姿があった。実質今、チームを引っ張っている存在。彼は普段通り落ち着いた様子をしていて両腕を組んで二人を、そして奥にいる花織を見ている。花織は顔を上げた、そして鬼道にじっと視線を向ける。鬼道は黙って二人の間を裂き、花織の前に歩み出た。
「花織のことは一度俺に任せてくれないか」
「え?」
唐突な提案だった。一之瀬と土門は顔を見合わせる。確かに……、花織のことを熟知していると呼べるのは風丸を除けば鬼道だけだろう。何せ鬼道は花織にとってある種特別な人間であるのだ。そして鬼道にとっても。しかし、彼らが2人きりで話をするというのはどうだろう。
「え、でも鬼道……、君は」
「頼む、花織とふたりで話したい」
有無を言わせない口調だった。鬼道の声には何か固い意志の様なものが感じられた。何より彼からは花織に対する揺るぎ無い愛情を感じる。……今でもこの男の想いは変わりはしないのだ。一之瀬と土門は分かった、と鬼道の言葉に頷きその場を退散する。鬼道は花織の手を取る。そしてマントを翻し、花織に微笑んだ。
「行くぞ、花織」
ズタズタになった花織の心に、鬼道の声は変わらずに響いた。