• テキストサイズ

嫉恋

第13章 絶望に染まる





「花織」

雨の中で自分の名前が呼ばれた。自分の名前に花織は振り返る、彼が自分を呼んでくれたのではと思った。でも違った花織を呼んだのは花織に今、傘を差しかけてくれている一之瀬だった。その後ろにはリカと土門もいる。

「花織、何してるんや!こないな所に居ったら危ないやろ!」

リカが座り込んでいる花織の視線に合わせるように背を屈めた。花織はぼんやりと三人を見上げる。酷い雨で花織は全身びしょ濡れだった。黒髪からも止めどなく雨のしずくが滴っている。

「風邪ひくで、一緒に戻ろうや。皆アンタを心配しとる」

リカが花織の腕を引っ張った。実の所、花織が失踪したというのはチームの中でも若干薄れている案件だった。花織があの場を走り去った後、円堂が練習を拒否したことがチームを揺るがせていた。それでも彼女と親しい友人が花織のことを放って置くわけがなかった。マネージャーたちは円堂に掛かり切りだが、リカに一之瀬そして土門はこうして花織を迎えに来てくれた。

「……私」
「話、ちゃんと聞いたるさかい戻ろや。な?」

リカがいつもより優しい穏やかな声で花織に言う。そして花織の腕を引っ張り、花織を半ば無理やり立たせた。花織はフラフラと立ち上がる。俯いていて、雨が降り注いでいても花織が涙を流していることは三人には明白だった。

三人は陽花戸へ向かって歩き出す。一之瀬と土門は黙って傷ついている花織を見ていた。いつになく花織はボロボロだ。以前風丸の言葉に傷ついた彼女を見たことがあるが、今の彼女はその比ではないと思った。

「辛いなあ、花織」
「……うん」
「監督も酷いことばっかりやし」
「……うん」
「風丸が出てってもうて、一番傷ついとるのはアンタやのにな」
「……」
/ 433ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp