第12章 心の均衡
花織は円堂の言葉に口元を手で押さえた。"僕、変じゃなかった?"聞き覚えのある言葉だ、花織がイプシロン戦の直後に吹雪に問われた質問だ。花織は背筋にさっと冷たいものが走るのを感じる。吹雪はずっと悩んでいたのだ、花織が思うよりも深刻に。そして吹雪は花織に話そうとしてくれていた。
花織は昨日吹雪が自分へと注いでいた視線を思い出す。…………ずっと助けを求めていたのだ、彼は。
「キャプテン……。私……」
「花織?」
花織は震える声で呟いた。花織の隣に立っていた鬼道が彼女の震えた声と、ショックを受けたような表情に気が付いた。どうしたんだ、と鬼道が花織に囁く。花織は静かに自分の中に秘めていた吹雪の違和感、そして最近の出来事を話した。
「私も、キャプテンと同じ質問をされました……。イプシロン戦が終わった直後に。私、ずっと吹雪くんが悩んでるんだって気づいてて……。でもはぐらかされたり、タイミングが合わなくて話が聞けなくて……。だけど私が、もっと早く話をちゃんと聞いていれば」
花織が両手で顔を覆う。そうであれば、こんなことにはならなかったんじゃないだろうか。自分のせいだろうか、と花織は自責の念に駆られた。それにより込み上げそうな涙をぐっと飲み込む。鬼道は何も言わずにそんな花織の背中をさすった。そして俯き言葉を紡ぐ。
「監督は、何か知ってるんじゃないですか」
皆の視線が瞳子監督へと向かった。監督は気まずそうに目を逸らす。円堂が念を押す様に彼女に言葉を掛けた。
「何か知ってるんですか。……監督!」
円堂の言葉の後、数秒の沈黙があった。瞳子は一度目を伏せて静かに息を吐いた。そして雷門イレブンのメンバーを気まずげに見据える。瞳子は吹雪士郎の過去について語り始めた。
「吹雪くんには弟がいたの」