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嫉恋

第12章 心の均衡




遠くから何やら音が聞こえるのは円堂がタイヤを使って練習している音だろうか。さっき約束をしたというのもあながち嘘ではないのかもしれない。だが試合、という言葉で花織はほとんど少年の正体に確信を持った。

「私は」
「……」
「私は貴方が、エイリア学園の者だと思います」

花織は声を絞り出すと同時に逃げ出す準備をした。少年の足がぴたりと止まる、表情は少し花織の言葉に驚きを浮かべているようだった。少年はふふ、と笑を零す。その次の瞬間には花織は少年に追い詰められていた。顎をぐいと持ち上げられ、じっと少年は花織の顔を覗きこんだ。一瞬の出来事に花織は動くことはおろか、声を上げることもできなかった。

「君、思ったよりも察しがいいんだね。円堂君は全くそんな事、疑わなかったんだけど」

少年は楽しそうに笑いながら花織の頬を撫でる。少年が何を考えているのか、花織にはさっぱりつかめない。ただ分かるのは、今自分が危機的状況に置かれているのだということだ。

「でも気づくのが遅かったね。君は今、俺の手の中だよ。君を肉体的にも精神的に傷つけることができる。…………君の大切な人を傷つけることだって簡単だ」

少年は不敵に笑う。少年にはこの少女のことは筒抜けだった。彼女を取り巻く交友関係、彼女に寄せられている幾多の想い、執着、そして嫉妬。彼女は面白い人物だ、円堂とはまた違った意味で。

この少女の存在は雷門の選手たちの中核を簡単に揺らがすことができる。興味深い人物、何がそんなに彼らを惹きつけるのかとても興味がある。恐らく、父さんに知られればこの少女は一瞬で消されるだろう、目障りな雷門イレブンを葬るために。

でも、何だかそれはとてももったいない。彼はそう思った。少女がフィールドを駆けていた姿を思い浮かべる。そして今、手中にある彼女の瞳を見つめた。

警戒と恐怖で自分を見つめる大きな瞳。恋人に接するときは幸せそうにきらきらと輝き、慈愛に満ちるくせに。その瞳を俺の手で揺るがせたら……、そう思った。
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