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嫉恋

第12章 心の均衡




夜、消灯時間を過ぎてから花織はピッチや侵入を許可されている範囲内で陽花戸の校舎を歩き回っていた。普段なら練習をするはずなのだが、そうもいかない。花織は吹雪士郎を探しているのだ。先刻、といっても1時間ほど前、夕食後に風丸そして土門や一之瀬、リカたちと歓談している時のこと。やけに吹雪から視線を感じた。彼はじっと花織のことを見ているようで、ずっとマフラーを握り締めて花織に縋る様な視線を向けていた。ただ事ではないような気がした。ちょっと断りを入れて吹雪と話すべきだったとも思うが、抜けるタイミングが見つからず今に至る。

吹雪が以前のように一人で練習をしていないだろうか、トイレに引きこもっていないだろうか。そう思って花織は吹雪のいそうな場所を探し回ったのだが、どうやら今日はキャラバンの中で早々に就寝しているようだ。話を聞くのは明日にした方がいいかもしれない。明日の夕方は特に予定もないし、ゆっくり話を聞く時間もあるだろう。それにこの間、吹雪が言い掛けた言葉も気になる。

"花織さん……。今日の僕、変じゃなかった?"

あの時の言葉、吹雪は自分が不調であると自覚している。そしてそれを客観的に認めてほしい様な節がある。でもそれ以上は分からない。彼が花織にどんな答えを望んでいるのか、それによって彼が何を聞きたかったのか。花織にはわからないのだ。でもきっと吹雪は人に言えない何かを抱えている。自分がそれを聞くことで吹雪が楽になるのなら、それを聞くのがマネージャーとしての自分の務めだと花織は思う。

それとも、一度鬼道に相談してみるべきだろうか。花織が気付くようなことに鬼道が気付いていないとは思えない。実質チームの指揮を執っていると言える彼にまずは意見を聞いてみるのが得策だろうか。花織は一人考えを巡らせる。そんな彼女の背後に一つの陰が忍び寄った。

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