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嫉恋

第12章 心の均衡




風丸が腰に手を当て髪を揺らして笑った。今日の彼はとても上機嫌だと花織は思う。試合中、あんなに楽しそうだったのは久しぶりだったし、風丸の足の速さが改めて実感できた試合だったように思う。その時ふと思ったのは久しぶりに風丸と一緒に練習をしたい、ということだった。

「じゃあ時間もないし、早速始めよっか」

ストレッチに始まり、ランニング、ドリブル、パス、フェイントそして最後に一対一での練習をふたりは時間の許す限り行った。練習に誘ったのは花織であったが、風丸こそがこのふたりきりの練習に意義を見出していた。……まるで、フットボールフロンティアの全国大会前に戻ったような感覚だった。

ただ強いとか、速いとか関係なく単純に花織とボールを蹴ることができるのが楽しかった。誰よりも息の合う彼女だからこそ、練習していて気が楽だった。もちろん仲間たちとの練習がそうでないわけではない。だが花織と一緒に行う練習は何も気にしなくていいのだ。鬼道の天才的なゲームメイク能力のことも、吹雪のスピードのことも。

「お疲れ様、一郎太くん」

花織が予め準備をしておいてくれたらしいドリンクボトルを風丸に差し出す。風丸は礼を言いつつ、彼女の手からそれを受け取った。何だか本当に河川敷での練習をしているみたいだ。あの頃は近くの自販機でスポーツドリンクを買って飲んでいたりした。

「花織もお疲れ。ほら、これ花織のタオル」
「ありがとう」

風丸がベンチに置いておいたタオルを花織に差し出す。花織はそれを受け取って風丸の座っているベンチに腰かけた。汗を拭きながら花織は大きく息を吐く。その表情はどこか嬉しそうで、そして満足げであった。
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