第11章 不穏な空気
でもこの頃は違う、この頃は彼女に自分を理解してほしいと思うようになっていた。先日、深夜に彼女に会ってからだ。
花織は吹雪の中にある"もう一人の吹雪"を見分けた。無論彼女だけができるわけではない、白恋の皆だって分かってくれている。でも花織は"もう一人の吹雪"の存在すら知らないで吹雪を見分けたのだ。だから吹雪士郎は出来ることなら彼女に縋りたかった、自分を見つけてくれる可能性のある花織に。どこまでも底抜けに優しい雷門イレブンのマネージャーに。しかしそれは無理だと彼は思っていた。
「あの、花織さん……」
「うん」
「僕に元気がないって……、どうしてわかるの?」
吹雪は小手調べに彼女の言葉を繰り返す。花織はうーん、と少し困ったような声を上げながら吹雪の問いかけに答えた。
「最近、吹雪くんが無理をしているような気がするから。あんなに無茶に練習してたり、こんなふうに急にどこかに行っちゃったり。前の吹雪くんはそんなことしてなかったように思うから。それに今日の試合、吹雪くんいつもよりミスが多いように感じたの、ディフェンスのときだけ」
「そっか……」
吹雪はぎゅうと手を握り締めた。この人は思っているより自分のことを見てくれている。吹雪士郎という存在に触れようとしてくれている。たとえそれがマネージャーとしての行動だとしても。吹雪はぶるぶると手を震わせた。その手に花織の手がそっと重ねられる。吹雪は温かいその手に縋るように自分が聞きたかった言葉を繰り出した。
「花織さん……。今日の僕、変じゃなかった?」