第11章 不穏な空気
ハーフタイム、皆イプシロンと互角に戦えていることにチームの士気は上がっていた。
「いいぞ、皆!イプシロンの動きに負けてないぜ!」
「絶対に奴らの動きを止めてやるでヤンス!」
「俺たちの力を見せてやろう!」
風丸も、今日は何となく自信に満ちているような感じで花織は安堵した。エイリア学園との戦いで彼は楽しいサッカーができなくなっている様に感じていたから、彼が試合中笑顔でいるだけで安心できる。その時花織の目にふらりとどこかへ向かう吹雪の姿が見えた。その様子はやはりいつもと違ってどこか妙に見える。
「……」
花織は心配になって吹雪の後を追った。最近の吹雪はどこかおかしい。どことなく悩んでいるようだし、先日の夜の出来事も気になっている。一度じっくり話を聞いた方がいいかもしれない。
地下通路の暗い道、花織は吹雪の姿を探す。耳を澄ませてみればどこかから静かに水音が聞こえた。花織はその音を追って歩を進める。音はどうやら男子トイレから聞こえているようであった。流石に男子トイレに踏み込むことはできず、入り口の横に背を預けて中の様子を窺う。
人の気配は水音のせいでわからない。でもバシャバシャ、と不規則な水音がすることから誰かがいるような気がする。花織はじっと入口の傍で聞き耳を立てる。中からぼそぼそと誰かの声が聞こえた。
「点を取るんだ、僕が取らなければ……」
トイレは音が響いて良く声が聞こえた。花織は確信する、吹雪の声だ。誰かと話しているわけではなさそうで、まるでその声は自分に言い聞かせているような感じであった。花織は益々じっと中の様子に耳を澄ませる。