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嫉恋

第11章 不穏な空気




そしてそんなことを感じているのは自分だけだと思っていた。花織は自分が秋や春奈と話そうが平然としていたから、そういうことを気にしないのだと思っていた。だから彼女がヤキモチを焼き、昨日の様な事をしていたのだと知れば、何となく嬉しいような気がした。

「そんなことない、私は一郎太くんが好きだよ……。他の誰より、一郎太くんが好き」
「……ありがとう、花織。もしもこれから、花織をこんな気持ちにさせるようなことを俺がしてしまったら、ちゃんとこんなふうに言ってくれるか?」

花織は静かに頷く。風丸はそれだけで花織の心を僅かでも手中にできたようで、何とも言えない満足感の様なものが広がる。風丸は口元に微笑を浮かべながら花織の頬にそっと手を添えて花織の顔を持ち上げた。花織は涙を堪え、涙に潤む瞳を震わせている。そんな姿は風丸にとってとても扇情的だった。

「花織……」

風丸は彼女の名を呼び、彼女が何か言いだす前に自分の唇で彼女の口をふさいだ。次に何を彼女が切り出すだろうか、と考えると自分にとって都合の悪い言葉が出てくるような気がしたからだ。

彼女はきっと風丸に対して辛い気持ちをさせたくないから、風丸と同じ提案を持ちかけるだろう。だがそれを風丸は口にすることはできないと思っている。風丸の感じているヤキモチを一々口にしていれば彼女はチームの誰とも話をすることはおろか、目を合わせることもできなくなってしまう。彼女を好きだからこそそんなことを言って彼女に不便を強いたくない。何よりそんなことを言っていては男が廃る、風丸の男としての意識に反した。

だから風丸は何も言わない。ただ黙って、自分の中に募る蟠りを口にすることなく胸に秘め続けるのだ。

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