第11章 不穏な空気
花織がようやく顔を上げる。黙って彼女の言葉を聞いていた風丸はハッと目を見開いた。彼女の頬を静かに伝う涙が彼の目に留まったからだ。
「時間が経つたびに胸が苦しくなって。だって昨日私が感じた気持ちは、自惚れでなければ私が今まで一郎太くんに感じさせてた気持ちなんだよね」
「花織……」
風丸が花織を呼ぶ、花織は涙声で言葉を続ける。
「ごめんなさい。今まで気づかなくて、その上こんなヤキモチ妬いて。一郎太くんを傷つけるようなことをして……。本当に、ごめんなさい」
花織が涙を拭いながら風丸に頭を下げる。風丸は何も言わずに花織に歩み寄った。そして花織の身体をそっと抱き寄せる。彼女の髪に触れ、静かに彼女の黒髪を撫でる。
「俺こそごめんな。……言われるまで花織が昨日からそんなことを思ってたなんて分からなかった。俺に苛立ってることは分かってたんだが、まさか妬いてくれてたなんて思わなかった」
風丸はそっと花織の顔を覗きこむ。優しい笑顔を浮かべて風丸は花織のことを見つめた。
「今のお前の言葉、実を言うとかなり嬉しかった。花織でも妬いてくれることがあるなんて思わなかったから、いつも俺ばっかりがお前のことを好きな気がしててさ」
ちらりと風丸は花織が首につけている、自分がプレゼントしたばかりのペンダントに視線を向けた。風丸は自身がかなり嫉妬深い人間だと自負している。いつだって彼女に付きまとう異性の友人関係に対して嫉妬を覚えている。鬼道に一之瀬に土門に、そして吹雪に。チームメイトが花織に視線を向けるだけで苛立つし、話しだってしてほしくない。無論、そんなことを口にできはしないが……。