第11章 不穏な空気
翌朝、花織は朝食を早めに済ませると後片づけを洗濯を引き受けるからと頼み込んで秋たちに任せ、キャラバンで風丸を待っていた。昨晩はあの後、吹雪を強引にキャラバンに連れ戻し、自分もテントに戻った。それから眠りについたものの、早朝に目を覚ましてしまうほどに気持ちは落ち着いていなかった。風丸のことがずっと気に掛かっていた。
今はエイリア学園を倒すために頑張っている。恋愛ごとをチームに持ち込むのは間違いだとわかっている。皆強くなるために必死なのに、花織は自分はこんなことで悩んでいる。もちろん花織にも自分の実力に関しての悩みを抱えていないわけではない。それでも他の者に比べればマネージャーという本来の身分もある分、深刻に悩んでいるわけではないのだ。
何より花織にとってサッカーとは風丸だ、別に強さの証明ではない。風丸と一緒にプレーできなければ、彼のプレーが見られなければ彼女にとってサッカーの魅力は半減する。彼が好きだからサッカーを好きになった。エイリア学園を倒すために強い力を求めはするが、本当は彼と一緒に走ることができればそれでいいと思っている。
だからこの状況から早く脱却したかった。風丸に対して嫉妬という名の怒りを感じ、仲違いをしたのは初めてのことだった。今までは風丸が花織を大切に大切にしてくれていたから、彼の誠実さがはっきりと感じられていたから、何よりも彼にすべてを捧げられない自分が情けなくて仕方がなかったから彼に対して負の感情を感じたことがなかった。それを感じるようになったのは彼女が彼に負い目を感じることなく、純粋に真っ直ぐ彼を見つめられるようになったからという理由に他ならない。
「……」
風丸はここに来てくれるだろうか。早く会って彼に昨日のことを謝りたい、ちゃんと自分が何が嫌であんな態度をとってしまったのかをはっきりと伝えたい。もう彼に辛い思いをさせたくないから。
がたん、とキャラバンの扉が開く音がした。花織はハッとして顔を上げる。ぎゅっと汗ばむ手を握り締めた。彼はきょろきょろと、花織の姿を探す様にあたりを見回しながらキャラバンの中へと入ってきた。