第11章 不穏な空気
さて、練習所に残った花織であるが彼女は別に忘れ物をしたわけではなかった。ふたりと別れて更衣室へと向かったが、別の用が彼女にはあった。彼女は自分が今日使用したロッカーの中に予め置いておいたジャージを取り出す。
今日の練習で自分の実力不足を自覚した。もっと練習をしなければ彼らにおいて行かれるばかりだ。そう思った花織は夜、そして早朝に自主練をすることに決めた。幸いにもここであれば一人であっても十分な練習を行うことができるだろう。
花織は手早くジャージに着替え、髪の毛を結ぶ。花織は今日の練習で風丸が使っていたトレーニングマシンの方へと向かった。
今日は変な意地を張って風丸がいるからと、このマシンを避けているところがあった。だが鬼道の言うとおり、自分に今足りていないのは彼と同じところだ。ここを強化しなければ戦力アップは望めないだろう。花織は軽く準備体操をする。春奈にちゃんと練習を行う旨を伝えてるから問題にはならないはずだ。監督も花織の自主練習を黙認している。
花織は大きく伸びをしてマシンを起動させた。まずはレベル1、少しでもみんなに追いつけるようにと意気込みながら彼女は歩を進めた。
しばらく一人で練習を積む。ここのマシンはイナビカリ修練所のものよりも高性能で、実戦に近い特訓ができた。花織は膝に手を付き、肩で息をする。今ではレベル4で精一杯。ここの上限はたしかレベル10まである。イプシロン戦まで一週間を切った。それまでに一つでもいいからレベル10までをクリアできるようにならなければならないと花織は思う。
自分が選手として出場する、というのは雷門にとって最悪のコンディションの場合だ。メンバーが足りない、負傷者が出ている、そんな時には彼女が出ることになる。花織が試合に出るような事態になってはいけないのだが、万が一を想定して準備をしておくことは必要だ。準備をしておかなければ自分が攻めの起点にされてしまうかもしれない。そんなことが起こってもきっとそれを誰も、仲間たちは攻めはしないが花織のプライドが許さなかった。チームの足だけは引っ張りたくない。絶対に。
「よし、もう一度」
花織は汗を拭って顔を上げた。