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嫉恋

第11章 不穏な空気




「あの時は花織ちゃんも相当イライラしてたみたいだしなー。風丸にも悪いところはあったわけだし」
「だって、何か本当に頭に来ちゃって。……あんなに他の女の子にデレデレする一郎太くん、初めて見たし……」

思い出すと花織はまたむくれてそっぽを向く。土門はその様子に苦笑した。彼女も反省はしているものの、溜飲が下がったとは言えないようだ。鬼道の言うようにはさっさとはっきり自分の気持ちを風丸に伝えるべきだろう。

「俺の知る限りだと風丸は花織ちゃん以外に見えて無いことばっかりだったからなあ。……まあ早めに仲直りしろよ」
「うん。……あの、ふたりにお願いしてもいい?彼に言伝してほしいんだけど」

花織が申し訳なさそうに二人の顔を覗きこんだ。今日は時間的にも彼に会うのは難しそうだし、彼女にはこれからやりたいこともあった。彼もそろそろ休むだろう。明日の朝、練習の前にじっくり話す方がいいかもしれない。

「構わないよ。何て?」
「明日の朝、朝食を取ったら着替える前にキャラバンに来てほしい、って」

朝、朝食の時間から練習開始まで準備を含めて一時間ある。普段は着替えをするためにメンバーはキャラバンを使うが、この練習所には更衣室がある。恐らく、というか確実にキャラバンは無人になるだろう。そこで話せればいい、もちろん彼が来てくれれば、だが。

「了解!んじゃ、そろそろ戻りますか。消灯時間も近いしな」
「そうだな」

土門と一之瀬が立ち上がる。時刻はもうすぐ午後9時を過ぎる。キャラバンに戻らなければならないだろう。実際、点呼などはしないから戻ってなくても分からないのだが。花織も一緒に立ち上がったが、思い出したようにあっと声を上げた。

「私、更衣室に忘れ物しちゃったみたい。先に戻っててくれる?……一郎太くんにくれぐれもよろしく」
「わかった。でも早く戻れよ?」
「おやすみ、花織」

ひらひらと手を振りながら二人は戻っていく。花織も手を振り返しながらふたりの背中を見送った。
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