第10章 戦士の休息
「ありませんよ。……今ではやっぱり憧れでしかありませんから。それに恋人ならちゃんといます」
「え?」
花織はくす、と悪戯っぽく笑って見せる。花織の言葉にリカは一瞬きょとんとした。だがその言葉の意味に気が付いて目を丸くする。
「え、嘘、他に彼氏おるん?」
「はい。あそこにいる、青髪の彼。……風丸一郎太、っていうんです」
花織が視線を向ければちらと視線が合う。風丸はどうやらやはり花織を気にしているようだ。リカは風丸と花織を見比べて明らかに意外だ、と思ったような表情をした。へえ、と風丸の方をじっと見ながら花織の言葉に対する返答をする。
「玲華が可愛いって言うとった奴やん。へえ、アイツがアンタの彼氏なんや。……絶対あっちの奴やと思うたのに」
「今はちょっと喧嘩っぽくなっちゃってて……」
花織は苦笑しながらそう言った。え、どうしたん?と真面目な顔をしてリカが花織に尋ねる。花織は初対面の彼女にこんな情けない喧嘩内容を話すかどうかを迷ったが、ギャルズのメンバーに釘を刺しておくのもいいかもしれないと思い、訳を彼女に話した。
「トリプルCCCのFWに彼がデレデレしてたから、何だか腹が立ってしまって。だから私も鬼道さんに絡んでて……、でもそれがまた彼に対して話しかけにくさを作ってしまったというか」
「いじらしい乙女心っちゅーやつやな。めっちゃ気持ちはわかるで」
うんうん、とリカが腕を組んで頷く。やはりこういう言葉は今時の女の子だからこそ共感が得られる。思えば、他愛もない恋愛話を女の子としたのは初めてかもしれない。秋や春奈と話をするときは専ら相談事ばかりだし、夏未にそんな話をすれば窘められるだろう。そして塔子に至ってはそんなものに興味はない。そもそも秋と夏未の想い人が同じであるため、マネージャー間での恋愛話は何となくタブーになっているような感じであった。だから少しリカと話すのは新鮮に感じられた。