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嫉恋

第10章 戦士の休息




五分も経たずに彼女は応急処置を終えた。糸切ばさみで糸を切り、マントを広げる。花織は立ち上がって彼のマントを羽織ってみた。ふわりと鬼道の青いマントが彼女の身体を包む。

「な……」
「ふふ、直りましたよ。鬼道さん」

彼女の行動に鬼道は赤面せずにはいられなかった。ずっと想いつづけている彼女が自分のマントを羽織る、何だか支配欲の満たされる行動だと思う。加えて彼女は少し小柄だから鬼道のマントが大きく見えてまたそれが何とも言えない魅力を感じさせた。

だが鬼道と違う意味で大きく目を見開いたのは風丸である。彼は鬼道や花織とは別のメニューをこなしていたのだが、花織の動向が気になってベンチの方には視線を向けていた。そしてこの行動を目の当たりにしたのだ。一気に胸の中で黒い感情が増幅する。他の男のものを、しかも少し前まで想っていた男の私物を身に着ける花織を今すぐにでも自分のものであると自覚させたい気持ちに駆られた。滅多に見せない恐ろしい形相で彼はその光景を睨む。鬼道はその視線を受けてため息をついた。

「花織」
「何ですか?」

にこりと花織が笑う。鬼道は彼女の方からマントを剥すと、ポンと彼女の頭に手を置いた。そして花織の耳元で彼女の真意であろう推測を囁く。

「風丸に対する当て付けはその位にしろ。悪ふざけが過ぎると拗れるぞ」

花織はハッと目を見開いた。そう鬼道にはすべてお見通しだったのだ。風丸は未だに花織が何に対して怒っているのかに気が付かない。普段なら自分が折れて謝るだろうが、何となく今回は謝りにくかったのだ。だからこそ花織も同じことをした。鬼道と仲良くしている様に振る舞えば、風丸が腹を立てて気づいてくれるのではないだろうかと思ったのだ。

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