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嫉恋

第10章 戦士の休息




「花織」
「私も参加して良いですか?」

にこっと花織がいつも通りの微笑を浮かべて鬼道に尋ねた。今現在、マネージャーの仕事がないのだ。見ている時間ももちろん大切であるが、今は練習が後れ気味になっている為、少しでも練習に時間を割きたかったのだ。

「構わない。……だが、お前はこっちのマシンよりも向こうの風丸と同じマシンで練習をした方が」
「こっちでお願いします」

有無を言わせない微笑みを彼女が見せている。鬼道はどき、と違う意味で心臓が脈打つの感じた。鬼道も花織が怒っているのを見るのは実際初めてだった。初めて知った、彼女が微笑みにここまで威圧を含めることができることを。

「ああ、まあ……。いいだろう」
「ありがとうございます」

軽く会釈して花織は他のメンバーの所に駆けて行く。鬼道が花織を振り返ってみると、彼女は至って普通通りの振る舞いをしていた。風丸が絡まないことに関してのみだが。

「相当怒ってるなー、花織ちゃん」
「ああ、あれほど怒る花織は初めて見た」

やれやれと言わんばかりに土門が鬼道に言葉を掛けた。土門は仲の良い一之瀬をリカにとられている為、フリーになっているのである。元帝国学園の2人、花織と仲の良いふたりは彼女の機嫌について言葉を交わしあう。

「まあ、風丸もなんで花織ちゃんが怒ってるか分かってないみたいだしな」
「少し考えればわかりそうなものだが。自分の行動には鈍感なんだろう」

鬼道はそう言いながら自分のライバルのことを考える。風丸一郎太という男は花織の感情変化には鋭い癖に自分に向けられる気持ちに対しての意識は薄いらしい。恐らく自分に自信がないからこそだろう、花織が嫉妬するなんて考えていないのではないだろうか。

鬼道は正直言って、ふたりが決裂してくれる分には構わない。何せ自分の元へ彼女を取り戻すチャンスができるからである。しかし彼女が悲しむ顔は見たくないというのが鬼道の考えだ。彼女の気持ちが一番大事、だからどんな時でも彼女の味方ではいるつもりだ。だがこんなにしょうもない話に首を突っ込む気はない。

サッサと仲直りをすればいいだけの話、風丸が気付くか花織が折れるか。ただそれだけだ。
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