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嫉恋

第10章 戦士の休息




「嘘だろ、リードされて前半終了なんて」

ハーフタイム、明らかに疲れた様子で土門が呟いた。花織は風丸に背を向け、選手のためにタオルを準備していた。今彼に話しかけると冷たい態度を取ってしまいそうだったからだ。黙々と白いタオルを人数分準備する。

「いや、強いよ彼女たち」

ぴく、とその言葉に花織の眉が動いた。自分が手玉に取られて置いてそんなことをいうの、と益々イライラを強めてしまった。唯風丸は彼女たちの実力を認めただけにすぎなかったのだが、今の花織の怒りには結果として火に油を注いでしまったらしい。ぎゅっとタオルを握る手に力が籠った。

花織は無表情に選手たちにタオルを配った。マネージャーたちも、そして一部の選手たちも花織が恐らく風丸に対して苛立っていることに気が付いていた。いつもは笑顔を振りまいている花織が明らかに無表情なのだから当たり前だろう。そしてその原因もはっきりと分かっていた、本人以外は。

「花織、タオルを貰ってもいいか?」

自分が彼女の気に障ることをした自覚の無い風丸はいつもの通りに花織に声を掛ける。花織はじとっとした目で風丸を一瞥する。風丸は困惑した、こんな目で彼女に見られたことは無かったからだ。先ほどまでずっと上機嫌だったはずの花織が怒っている理由も分からなかった。

「花織、どうしたんだ?」
「別に、何でもないよ」

ツンとした様子で花織が風丸にタオルを差し出す。声色もいつもに比べて低いような気がした。風丸がタオルを受け取れば、花織はそっぽを向いてその場を立ち去ってしまった。風丸は困惑する。どうして彼女が機嫌を損ねているのかが分からない、試合展開で機嫌を悪くするような彼女ではないし。その時、誰かが風丸の肩をポンとたたく。風丸が振り返るとそこには鬼道が立っていた。

「自業自得だ」
「はあ?何が……」
「自分で考えろ。……むしろ平手を貰わなくて良かったな、アイツの平手は痛いんだ」

ふ、と鬼道が不敵に笑う。鬼道は以前彼女に打たれた経験があった。今度は自慢げにそんなことを語る鬼道に風丸がムッとする番だった。じっと花織の姿を視線で追いかける。花織は吹雪と話をしているようだった。
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