第10章 戦士の休息
「だって……、今まで忙しかったから仕方ないよ。謝らないで」
「だが……」
「いいの。……私ね、今日こうやって遊園地に来れるって知って、少し楽しみにしてたんだ」
花織はにっこりと微笑んで風丸を見つめる。その表情は気遣いをしているわけでもなく、心からとても嬉しそうだ。風丸が花織、と彼女の名前を零す。
「だからね、今はこれでいいの。一郎太くんとこうやって一緒に居られたらそれでいいんだ」
「……」
風丸の頬がポッと赤く染まった。彼女のいつも通りの素直な言葉に気恥ずかしさを感じずにはいられなかったが、だがそれでも救われたような気がした。いつも彼女の期待に応えられないと感じているからこそ彼女がこれでいいと言ってくれることに安堵した。しかし……、胸のどこかではやるせなさも感じている。
「花織……、全部終わったらまたここに来よう」
「え?」
「ここじゃなくてもいい、花織のいきたいところに行こう。俺と、デートしてほしい」
真面目な顔をして風丸が花織に言う。今度は花織が顔を赤くする番だった。彼氏からデートに行こうと誘われる、何だかドラマのワンシーンのようで憧れるシチュエーションだった。嬉しさににやける頬を左手で押さえて花織は頷く。繋がれた手はより強く握られた。
「……うん」
照れたように花織が微笑む。ふたりの気持ちが改めて通ったのを確認して、再び探索という名のデートに戻ろうと歩き出した。他愛もない話をしながら園内を回る。エイリア学園のアジトを探すことは二の次で、段々とふたりはデートに夢中になり始めていた。唯話をしているだけなのだが、やはりそれだけでも楽しい。