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嫉恋

第10章 戦士の休息




歯切れ悪く風丸が花織に言う。それは拒否と同等の反応であった。花織はそっか、と少し残念そうな顔をしてさらりと髪を揺らした。彼女の髪は以前は風丸よりも長かったが、一度切ってしまったことで今は肩ほどの長さになってしまっている。

「花織、俺たちの髪で良かったら梳いても良いぜ」

その時、朝食を買って戻ってきたらしい土門が花織に声を掛けた。一緒に一之瀬もいるようだ。二人はどうやら花織たちの話を聞いていたらしい。ニヤニヤと、だがそれでもどこか呆れたような表情で二人は花織らの話に割り込む。

「風丸みたいな長い髪じゃないけどね。折角、櫛を出したんだしやってくれないかな」
「そーそー、風丸は乗り気じゃないみたいだしな」

茶化すような口調で土門と一之瀬が言う。二人は風丸を煽っているようだ。花織の願いを受けないならば自分が、という考えが見え隠れしている。そんなことをすれば風丸が嫉妬することなどわかりきっているのに。風丸はムッと顔を顰める。だがそこにまた一名、論争に加わる者がいる。

「花織、俺の髪でも構わないが」

ひょっこり、前の座席から顔を出したのは鬼道有人だ。思いにもよらない参戦に花織も風丸も驚く。鬼道ドレッドヘアなど、櫛で手入れできるものではないだろうに。だが鬼道は真面目な様子でふたりを見ていた。一之瀬と土門はにやにやとその様子を窺っている。

「え、と……」

困り気味に花織が櫛を振った。誰に何を答えるべきか、鬼道の予想外の参戦に言葉を失ったようだ。そのときしゅる、と眉間に皺を寄せていた風丸が長い髪をほどく。彼の髪が肩から落ちて靡いた。
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