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嫉恋

第9章 精神の崩落




自分のスピードに関する不安も、エイリア学園を倒せるかという不安も、そして花織が自分だけを好いていてほしいという願いも切実な言葉として繰り出すことができない。

「……一郎太くん?」

彼は花織の顔を見ずに校門の方へと歩き出そうとした。だがそんな彼の良くわからない、こちらの不安を煽るような言動に花織は彼の名を呼ぶ。思わず歩き出した彼の左手を掴んだ。

「どうしたの……、今日の一郎太くん変だよ」

練習の時も、そして今も。花織は風丸の彼らしくない行動が気に掛かった。花織は彼の右手も捕まえて、自分の両手で彼の両手を包む。ねえ、と花織が風丸の顔を覗きこむようにして見上げた。その表情は心配そうに眉根が寄せられている。

「染岡くんの離脱は私も本当は嫌だし、一郎太くんにとっても凄く堪えるような事だったのはわかってる。でも、染岡くんなら怪我を治してすぐに戻って来るよ。……どうしてそんな顔をするの?」

花織は風丸がきっと思い悩んでいるのは染岡の離脱に対しての事ではないと悟っていた。彼の心の中に何かもっと秘めているものがあるはずだ。好きだからこそ、それを知りたかった。知ることによって彼の不安を払拭したいと思った。

「……力が欲しいと思ったんだ」

風丸はぽろりと自分の中で思い悩む感情のひとつを零した。それは以前、彼が親友である円堂に告げた言葉であった。自分を悩ます思いの一部であり、全てでもある一言。

「ちから……」
「ああ」

花織が風丸の言葉を反芻する。風丸はそれに頷いて目を伏せた。

「俺は……、早くエイリア学園を倒したい。入院している染岡や半田たちの為にも。花織を危険な目に遭わせないで済むサッカーができるようにするためにも」
「……うん」

花織が風丸の言葉に頷く。黙って彼を見つめ、手を握る花織は風丸の言葉を促した。彼の口から本心が僅かに零れ出る。

「でも今のままじゃ勝てる気がしない。……もっともっと力が欲しいんだ、奴らに勝てるだけの力が」
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