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嫉恋

第8章 届かない場所




「おいおいわかっちゃいねえな。鬼道クンはよお、それだけじゃねえよなあ。なあ佐久間?」
「ああ、それだけじゃないさ。……雷門に行ったときはさぞ嬉しかっただろう、鬼道。好きな女とずっと一緒に居られることになって」

睨み殺さん勢いで佐久間が花織の方を見た。鬼道も花織もいきなり話の矛先が花織に向いたことに動揺する。状況のつかめないふたりをせせら笑いながら佐久間の言葉に源田も続く。

「負けた俺たちを捨て、雷門へ行けばお前の大好きな月島が傍にいてくれただろうな。月島の応援の中での勝利はそれは気持ちよかっただろう。俺たち帝国のことを忘れるくらいにはな」

厭味ったらしい言葉だった。彼ら、佐久間と源田は鬼道が愛してやまない花織に対してあまり良い感情を抱いていなかった。確かに花織に惹かれる鬼道の気持ちは分からないでもない、と思っていたが鬼道を盲目にしてしまいかねないという存在だと思い、帝国に居た時から彼女のことは不安視していた。

そして今になって思うのは、この女が雷門でなく帝国にいたなら、鬼道は雷門に行かなかったのではないだろうかという考えだ。逆に花織が雷門に居たから鬼道は躊躇うことなく帝国を去っていったのではないか、そういうことだ。

だがその考えは全くの見当違いだった。確かに花織の傍に居られることを喜びはした。だが、花織がいるから等というしょうもない理由で鬼道は雷門へ行ったわけではない。鬼道は頭を振った。

「アイツは……、花織は関係ない!何故そんなことを言う!?」

狼狽して鬼道は彼らの言葉を否定する。だが鬼道が必死に否定するためか、佐久間も源田も彼の訴えを鼻で笑うばかりだった。畳みかけるように鬼道を非難する言葉を綴る。

「あの女と仲睦まじく俺たちの見舞いに来たのは誰だ?お前だろう鬼道」
「あの女が今も帝国にいれば多少でも未練を感じてくれたんだろうな?負けを喫した、あの女がいない帝国はもう用済みってわけだろう」

あの女、と花織を睨むふたりの眼には花織に対する敵意の様なものが含まれていた。花織はその視線に耐えかねて顔を背ける。だが、意を決して源田と佐久間に視線を戻した。
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