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嫉恋

第8章 届かない場所




「俺たちを見捨てて雷門に行ったお前に何がわかる」

見下すように佐久間が吐き捨てた言葉は鬼道の胸に鋭く突き刺さった。鬼道は、心の中で常々気にしていた。帝国の皆は自分が雷門に行ったことをどう思っているだろうと。恨まれていやしないかと。だから佐久間の言葉は胸に痛かった。動揺を隠すように鬼道は胸の内を吐き出す。

「ち、違う!お前たちを見捨てたわけじゃない!……俺は、自分が許せなかった。チームメイトを助けられなかった自分が。……だから!」
「綺麗ごとを言うな!!……お前が欲しかったのも強さだ!」

源田が鬼道を指差す。鬼道は怯んだ、確かにそうかもしれないと思った。世宇子との試合、自分がピッチに立つ前に試合が終わっていた。目の前には地に伏す仲間たち、何人が病院送りになっただろう。どれだけ自分の不甲斐なさを悔いたことだろう。だから彼らの為にも世宇子を倒したかった。俺が仇を取ってやったとでも言いたかったのかもしれない……。

だが、そうやって言い訳をしても鬼道が欲しかったのは源田の言うとおり強さだった。世宇子を倒す力が、チャンスが欲しかった。だから雷門へ転校してきた。世宇子に勝利をしたことで自分たち帝国の雪辱も晴らされたものだと思っていた。鬼道は胸の内で苦い思いを感じながらも彼らに説得の言葉を掛けた。

「そのためにあの影山についてもいいのか……?影山が何をやったか覚えているだろう!」

力を求めたのは自分も同じかもしれない。だが、影山の元へ傅くというのは悪魔に魂を売るのと同等だ。いったいどんな目に遭わされるか分からない。鬼道は最早懇願と言える口調で源田と佐久間の元へ歩みよった。

「源田、俺たちと一緒に来い。なあ、佐久間も……一緒に」

乾いた音がフィールドに響く。差し出した鬼道の手を佐久間が叩いたのだ。円堂と鬼道、そして花織は息を呑む。鬼道の手を叩いた佐久間の眼は鬼道の説得を全く聞き入れていないようだった。冷たく鬼道を睨み、お前にはわからないさ、と吐き捨てるように言う。花織の隣でニヤニヤと楽しげに笑っていた不動が彼らに向かって野次を飛ばした。
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