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嫉恋

第8章 届かない場所




「花織に触るな!」
「花織から手を離せ!」

ふたりの剣幕に不動は少し呆けたような顔をする。だがすぐに面白いものを見たとでも言いたげにニヤニヤと嫌らしい笑みを浮かべた。そしてぐいと花織を自分の方へと引き寄せる。

「ハッ……面白え。随分と愛されてんなあ、鬼道クンの彼女は。ホントのところ鬼道クンが慎ましーい片思いしてんのか、そこの外野クンの勝手なヤキモチかは知らねえけど。とにかく、今日はお前のだーい好きな鬼道クンの隣に座って大人しくしてな。ほらよっと!!」
「きゃっ!!」

不動が強い力で花織を鬼道の方へ放る。鬼道は両手で花織の身体を抱きとめた。その仕草がまるで恋人に対するものであって、不動はまたいやらしくにやついた。鬼道は抱きとめた花織の顔を覗きこむ。

「大丈夫か、花織」
「はい。大丈夫です……」

強く掴まれたせいで手形くっきりと残ってしまった右腕を花織は摩る。その一連の光景を見ていて、本来の花織の恋人である風丸は、酷くどす黒い感情を胸の中で沸き立たせていた。

――――花織は俺の物だ。

奥歯を噛みしめながら風丸は眉間に皺を寄せた。どんな解釈をされているのかは知らないが、こんな奴が気安く触っていいわけじゃない。鬼道の彼女だなんて呼ばれる謂れもない。彼の理性が辛うじてそう叫ぶのを律していた。

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