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嫉恋

第7章 瞳に映る君




唐突に春奈の声が響く。選手たち、いやその場にいたメンバーは全員春奈の方を振り返った。春奈は勢いよく手を広げ、その人物を指し示す。

「木暮君が!」
「うぇ!?」
「「こ、木暮!?」」

驚きの声が選手たちから、そして木暮本人からも挙がる。彼自身、春奈の言葉に予想すらしていなかったようだ。サッカーボールを抱えて何を言ってるんだコイツは、と言いたげな目で春奈を見ている。

「木暮くんだってサッカー部の一員です!」
「でも補欠だろ?大丈夫かよ、そんな奴入れて」
「下手にウロチョロされると、かえって邪魔になるし」

春奈が叫んだがチームの反応は微妙なものだった。発言した染岡も土門も複雑そうな表情をしている。確かに春奈が言うとおり、木暮はサッカー部の部員なのだからまったく戦力にならない、ということはないのだろう。だが、問題は補欠だったという点と今までの悪戯の数々である。チームメイトとして信用ならないうえ、実力もないのでは土門の言うとおりかえって邪魔になってしまうだろう。

「そんなことないです。木暮君なら大丈夫です!だからお願いします!」

だが春奈は諦めなかった。春奈の後で当の木暮が動揺してばかりだったが、彼女は必死にメンバーに頼み込んだ。春奈の頼みを聞いて円堂が静かに春奈の元へ歩み寄る。その表情はいつになく険しい。

「キャプテン!お願いします!」
「……わかったよ、音無」

円堂が笑顔と共に吐き出した了承の言葉に、ええ!?という困惑の声が上がる。選手たちが動揺している中、円堂は監督を振り返りさっさと許可を取ってしまった。これで正式に木暮が選手として参加することが決まったわけである。春奈は大喜びで頭を下げ、木暮を振り返った。

「い、いや……俺」
「何怖気づいてるの!皆を見返すチャンスじゃない!」

春奈が意気込んで言葉を掛ける。木暮はボールを抱えてでも、でも……と呟いている。きっと彼は不安なのだろう。自分よりも遥かに上手いはずの先輩たちが目の前でコテンパンにされ、その上今から自分がその相手と対戦しなければならないということになったら怖くならないわけがない。

「大丈夫、木暮君なら。私、信じてるから!」
「俺を……、信じてる?」

木暮が小動物のように春奈を見上げた。春奈は頼もしく信じてるわ、と返答をする。春奈の表情に昨日の陰りはなかった。
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