第7章 瞳に映る君
まだ転びそうになった衝撃にバクバクとする心臓を撫でつける。そしてあることを疑問に思った。……隣に居た彼はどうなった?ハッとして花織は後ろを振り返る。そこには無残にも転んだ選手たちが山積みになり、その一番上に彼がぐったりと乗っかっていた。
「い、一郎太くん……!」
慌てて花織が吹雪から離れ、今度は転ばぬよう用心しながら風丸の元へと駆けよる。そして壁山の上に伏せている彼の肩を揺すぶり、急いで助け起こした。
「大丈夫?怪我してない?」
「……ああ、俺は大丈夫だ」
今度は自分が心配そうに彼の顔を覗きこみ、焦った様子で問いかける。風丸は柵に手を置きつつ、花織の髪を撫でた。
「花織は、怪我してないか?」
「うん、吹雪くんが助けてくれて……」
「……そうか」
心なしか低い声で返答し、風丸がちらりと吹雪を見やる。吹雪は少し眉根を寄せて花織の後姿を見つめていたようだが、風丸に気が付くといつもの微笑を浮かべて怪我がなくてよかったよ、と人の良いことを言った。
風丸はムッと眉間に皺を寄せてしまう。吹雪が花織を助けたことも、今一瞬見せた一連の行動も気に入らない。……まるで花織に対して吹雪が特別な感情を抱いているかのように錯覚してしまう。正直、吹雪がそういう意味でのライバルになってしまうと自分では適わないような気がした。
「一郎太くん、大丈夫?」
「えっ……」
「ぼうっとしてる。……本当はどこか怪我してるんじゃない?」
花織が風丸の肩に触れ、再び心配そうに風丸の顔を覗きこむ。風丸は大丈夫だと返しながら、立ち上がった。花織が今、これほどまでに自分の傍にいてくれているのに他の奴らを気にしていても仕方がないだろう。胸の中で何か燻るものを感じながらも風丸は自分の中に湧く妙な感情を振り切った。