• テキストサイズ

嫉恋

第6章 煌めきのひととき




花織はぴくっと身体を揺らす。彼の言葉に何か含みのあるような気がした。花織は胸の下あたりで腕を組んで少年を見やる。冷たい北風が2人の髪を舞い上げた。

「好きですよ。……急になんでし」
「どうして?」

花織の言葉を遮るように少年は言葉を重ねてきた。落ち着いた声色だが、どうしてかそれは花織の不信感と得体のしれない恐怖心を煽る。彼の素性が全く知れないからだろうか。花織は彼に動揺を見せた。

「……私の大切な人が、サッカーが好きだから。彼がサッカーをするから私もサッカーをするし、サッカーを見ることが好き、です」

嘘偽りの無い答えを花織は口にした。少年は一瞬、驚いたように目を見開いて花織を見た。しかしすぐに表情を緩ませてへえ、と笑みを浮かべる。今度の微笑みは先ほどよりも親しみの様なものを感じた。

「奇遇だね、俺も父さんがサッカーが好きだったから始めたんだ。父さんがサッカーが好きだから俺はサッカーをする」

奇妙な一致だった、だがそれがいったいなんだというのだろう。花織は黙って彼の言葉を見守っていた。本当に、不思議で妙な人。できることならば早く解放してほしい。花織はそんな想いを内心抱く。

「円堂君もそうだけど、君のことにも興味があるなあ。マネージャーさん、名前は?」
「月島、花織……」

相手は明らかに不審者、わかってはいるが勢いに気おされて名前を答えてしまった。ふうん、と少年は満足げに笑って花織を見据えた。

刹那、地響きと共に空に暗雲が立ち込める。周囲の空気が一瞬で悪くなるのが分かった。これは……、花織は驚いて目を瞑ってその場にしゃがみ込んでしまう。何が起こったのかを瞬時に悟った、きっとエイリア学園が来たのだ。そう思う花織の耳元にそっと少年の囁き声が聞こえる。

「……またね、月島さん」

少年の声と共に地響きは治まった。花織は恐る恐る目を開け、慌てて周囲を見渡した。少年の姿はもうどこにもなかった。
/ 433ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp