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嫉恋

第6章 煌めきのひととき




胸に渦巻く言いようのない感覚。ダメだ、といえば花織は俺を心の狭い人間だと思うだろうか。実際宣言しておきながら、花織にそんなことを思われるのは嫌だった。渋い顔をして風丸は黙り込んでいた。そんな彼の手に花織は自分の手を乗せる。

「一郎太くんと一緒に練習できるように、私頑張るから」

真摯な目、絶対に下心などなく一生懸命風丸の隣に立とうと努力したいと望む目。こういうところ、円堂に似てる。目標に向かって直向きに努力するところが円堂に似ている。風丸はじっと自分を見つめてくる花織から目を逸らした。彼は花織の目に弱い。

「……仕方ないな」
「ありがとう、一郎太くん」

少しため息をついて風丸が了承ともいえる言葉を呟く。花織は彼の意を汲んで申し訳なさそうに礼を言った。構わない、と風丸は花織に言いつつ雪道を滑り始める。実際、花織と吹雪を2人きりにすることは気のりしないが、花織が自分の為にと努力する姿は他の人間に対して優越感を覚えた。

風丸が滑り去った後、花織はようやく不安定ながらに立ち上がる。長々と座っていたせいでお尻が冷たかった。あまりの冷たさに花織が臀部に触れながら顔を顰めていると吹雪がねえ、と花織を呼んだ。

「花織さん、風丸くんと随分仲が良いんだね」
「え?あ、うん……。一応、その、彼氏だから……」

吹雪がいつもより少し低い声で問うた言葉に、花織は動揺しながらも答えた。その頬はほんのりと赤く、照れくさそうに表情が緩んでいるようだ。吹雪の眉が少し動く。

「じゃあ昨日言ってた好みの人は彼の事だったんだね」
「うん。だから彼と一緒に滑るためにも、ちゃんと滑れるようになりたくて。……風になりたいのも勿論だよ?」

照れたように、でも悪戯っぽく花織は笑って見せる。吹雪は何とも言えない思いを感じた。彼女は可愛い、普通の女の子と同様に。でもどうしてだろうか、それだけじゃなく目を奪われる。構いたくなってしまうようなそんな何かがある。

「不純な理由だけどごめんね、吹雪くん」
「……ううん。構わないよ」

でもどうしてだろうか。自分に優しくしてくれた花織が、他の人間に想いを抱いていると知ると少し不愉快な気分になった。
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