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嫉恋

第6章 煌めきのひととき




「どうしたの?」

その時、ふんわりとした声が2人の間に分け入った。二人が声の主を見やると華麗なボード捌きで吹雪が2人の傍に停止する。雪が綺麗に流れてゆく。吹雪の白いマフラーが風に静かに持ち上げられた。

「吹雪くん」
「花織さんに風丸くん、こんなところに立ち止まってちゃ危ないよ」

昨日もこんなことを吹雪に言われたような気がする。花織は苦笑しながらごめんなさい、と吹雪に謝った。

しかし、それにしても吹雪は強かというか、何というべきだろうか。花織と風丸の間に分け入る人間はほとんどいない。邪魔できるような空気じゃないからであるし、皆二人が恋人同士であると知っているから邪魔をする気にもならない。

吹雪がそれを知っているか知っていないかは定かではないが、このふたりの空気の中に飛び込めることは本当に凄いことである。いろいろな意味で。

「そういえば、花織さん。スノボー教えるって約束してたね。よかったら今から教えてあげるよ」

ハッとした様子で花織が吹雪を見上げる。吹雪が小首を傾げて花織を見つめた。花織は昨日が言っていたことを思いだしていた。そういえば彼は昨日、スノーボードを教えてくれると言っていた。

「えっと……、じゃあお言葉に甘えようかな」
「うん、いいよ」

吹雪がふわりと穏やかな微笑を浮かべた。

「花織」

風丸が少し咎めるような口調で彼女を呼んだ。その眉間には皺が寄せられている。少し気に入らなかったのだ、自分の申し出は断ったのに、彼女だって自分が嫉妬深いということを知っているはずなのに。……それに何も吹雪に教わる必要はないじゃないか、彼はそう思った。

「一郎太くん、ごめん。でも私、早く一郎太くんと一緒に滑れるようになりたいから。その一番の近道は経験者の吹雪くんに教えてもらうことだと思う」

彼女の言葉は正論だ。風丸だってそんなことは分かっている、花織が真面目できっと吹雪と一緒に練習するということに他意がないことだって分かっている。以前付き合っていた時から花織はずっと風丸に誠実にあろうとしてくれた、昨日だってそれを証明してくれた。わかっているはずなのに……。
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