第6章 煌めきのひととき
「ホント、一時はどうなるかと思ったけどな。……でも俺も一之瀬と同じだ」
土門も花織の気持ちを応援していたから、彼女の想いが叶ったことに対して心から良かったと感じていた。何せ初めは鬼道に肩入れしていて、彼らの中を引っ掻き回したのは自分であるとわかっていたから少しばかり心苦しかった。
だからこそ花織の想いが再び風丸に通じて良かったと思う反面、鬼道の想いが実らなかった事に対して虚しさの様なものを抱いている。土門は複雑な立場だった。風丸よりも一年も早くから花織に対して思いを募らせていた鬼道の気持ちも知っているのだから。
「風丸ともう喧嘩すんなよ?」
「うん」
花織の頭をポンポンと撫でながら、にっと土門が笑い掛けて見せる。その時、不意にこちらに寄せられている視線に気が付いた。鬼道……、土門は彼に視線を向ける。鬼道は花織を見つめていたようだが、土門の視線に気づくとふっと、困ったような仕方のないというような表情で眉を寄せた。
……アイツも了承してるんだな、一応。
どうやら知らない間に花織と鬼道の間にも決着はついていたらしい。
「花織、ちょっと来てくれないか?」
花織を呼ぶ声がして土門は再び花織に視線を戻す。するといつの間にか花織の背後には、彼女の恋人である風丸が立っていた。風丸は花織を見つめていたが、ちらりと土門に視線を寄越す。……余計なちょっかい掛けるなってわけか。土門は慌てて花織の頭から手を引いた。
「うん。それじゃあ土門くん一之瀬くん、また後でね」
軽く手を挙げ嬉しそうに笑いながら花織は風丸に付いて行った。土門は手を振りかえして彼らを見送る。教室を出ていく二人を見ていると仲の良さがよくわかる。風丸の表情も心なしか嬉しそうだ。土門の隣に居る一之瀬が呆れたように肩を竦める。
「花織が風丸の事を本当に好きなのは知ってたけど、風丸もよっぽど花織が好きだね」
「ていうか、寧ろ風丸の方が重症なんだよなあ……」
一之瀬の言葉に土門も苦笑する。それでも心から良かったと思える。花織が一番ショックを受けていた時のことを知っているからだろうか。だからこそ、思う。二人の間を裂くようなことがもう二度と無いようにと。