第5章 心の駆け引き
静かではっきりとした声だった。彼女の瞳は風丸を見据え、凛としている。その瞳からはもう彼女の想いに言ってんの曇りもないことが明らかであった。風丸の瞳が揺れる。彼女の想いには気づいていたにしても。
「だから、もう一度一郎太くんの傍にいさせてほしい。一郎太くんを誰よりも傍でサポートしたいの」
「……」
「もう、迷ったりしないから」
花織の言葉が嬉しかった。風丸は目を伏せる。花織が自分を選んだ、自分の隣に居ることを望んでくれた。自分の想いに答えてくれた。嬉しいことのはずだった。
しかし、今の風丸はそれでは満足しきれなかった。
花織は自分のものであってほしい。以前よりも大きな独占欲を抱えていた。以前のように花織が他の男と仲良くすることを良しとすることができるとは思えなかった。絶対に花織を束縛するという確信があった。
そうなれば花織はきっと苦しむ。
「お前の気持ちは嬉しい。……あんなことを言ったが、俺だって本当はお前を手放したくなんか無かった」
「一郎太くん……」
「でも寄りは戻さないほうがいい。お前の為にも」
風丸の言葉に花織はどうして、と言葉を漏らした。風丸は視線を逸らしながら淡々と理由を説明する。
「俺は、前にも言ったがそんなに優しい奴じゃないんだ。他の奴らと花織が仲良くすることも、話すことも気に入らない。俺だけを見てほしいって思ってる。……もしまたお前の傍にいられるようになったら、きっと前のように寛大ではいられない」
「……」