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嫉恋

第5章 心の駆け引き




花織は大きく目を見開く。しまった、と思った。何と円堂とばっちり目が合ってしまったのだ。音を立てない様にとキャラバンから距離を取ったのだが、逆にそれが死角から飛び出す形になってしまっていたのだ。

「月島!お前何やってんだよ、そんなところで」
「えっ、花織?」

円堂が驚いた様子でキャラバンの上から花織のいる方へと視線を向けた。円堂が花織の名前を呼んだことで風丸も花織がそこにいることに気が付き、こちらに視線を寄越す。花織は困ったように笑いながら、二人から目を逸らした。

「え、えっと……眠れなくて。散歩でもしようかと思ったらキャプテンの怒鳴り声が聞こえたので……。何かあったんですか?」

咄嗟に思いついたにしてはリアリティのある嘘だと花織は自分でも思った。今までの話を聞いていたことは伏せておいた方が良いだろうと花織は判断し、円堂に詳細を尋ねる。円堂はそうなのかー、と納得しながらキャラバンの上から降りてきた。同様に風丸も円堂の後から降りてくる。

「別に何でもないさ。な!風丸」
「ああ……」

円堂がバシバシ風丸の背中を叩けば、風丸は肯定とも否定ともいえないような笑みを零した。花織は風丸を見つめる、風丸も花織を見た。花織は風丸の不安は完全に払拭できていないような、そんな気がした。

「それより月島、お前こんなところにいると風邪ひくぞ?」
「は、はい……。もう教室に戻ります。……キャプテンたちは?」
「俺たちももう寝るさ」

円堂がな?と風丸に同意を求める。しかし風丸はああ、と返事しつつも続きの言葉を口にした。

「円堂、先に花織を教室まで送って来るよ。すぐそこだとはいえ、一人で行かせるのは心配だからな。それに少し話したいこともあるし」
「そうか?じゃあ俺、先に戻ってるぞ?」
「ああ」

風丸が頷けば円堂はおやすみ、という言葉を残してキャラバンの中へ入って行った。キャラバンの戸が閉まると同時にしんとした静けさがあたりを包み込む。花織と風丸、そのほかにはこの白い世界に誰もいなくなった。

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