第5章 心の駆け引き
「吹雪は凄いよ。俺たちも変わっていこうぜ、アイツに負けない様に」
「アイツを生かすにしても、誰かがエイリア学園からボールをとらなきゃな。それが勝利のカギになる」
明るい溌剌とした声、そして落ち着いた低い声。どちらも聞き覚えのある声だ。花織は一瞬で声の主を悟る、円堂と風丸だ。花織はキャラバンの物陰で聞き耳を立てる。彼らが何を話しているのかが気にかかった。
「ああ、風になればできるさ」
「できなかったら?」
どきり、と花織の心臓が低い声に音を立てた。昼間にも感じたこの感覚に他に聞こえるはずもないのに思わず胸を押さえる。落ち込んだような、否定的な声。間違いなく風丸の声だ。
「そんなこと言うなよ」
風丸の言葉にムッとした様子で円堂が言った。花織は耳を欹てた。円堂がそういうのも無理はない、風丸の言葉は円堂たちの頑張りを否定してしまう。……でも普段の彼ならそんなことを言うはずがない。誰よりも円堂のがむしゃらな頑張りを応援してきたというのに。
「力が欲しいんだ」
「え?」
花織は二人の会話に対し、動悸を感じた。緊張というか妙な胸の不快感、意識していないのに息が荒くなる。風丸が悩んでいるのではないか、ということに対してはここの所気にかかってはいた。これが彼がずっと胸中に秘めていたことなのだろうか。
「神のアクアがあれば……」
彼の小さな呟きに一瞬息が止まった。