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嫉恋

第5章 心の駆け引き




秋と別れた花織は昇降口へたどり着くとふう、と息をついた。あの場は誤魔化せたのか何なのかよくわからないが、何とか外に出ることを告げられたのだからいいだろう。

花織が外に出ていたのは悩み事があったからではない。皆が寝静まった後、やはり一人で練習をしようとしていたからである。ただ秋に練習をしたいから等と言えば、絶対に反対され外出を禁じられてしまうだろう。

花織は靴ひもを結びなおして軽くストレッチをした。雪がそこらに積もっているし、地面が凍っている可能性もあるからボールを使うことは危険だろうと昼間のうちに考えた。よって北海道にいる間はランニングをしようと決めたのだ。校舎脇の階段を下ればグラウンドに出る。そこでランニングでもすれば少しは体力維持にもなるはずだ。

いざ外に出ようと思い、扉に手を掛けるとふとした考えが花織の脳裏をよぎった。夜間にこんな練習をしたところで選手たちに追いつけるわけがない。

花織はマネージャーだから練習をする時間など本来ない。練習時間はマネージャーの仕事に徹するべきだと思うし、花織自身がそれを望んでマネージャー業をしている。瞳子は練習に参加するべきだとたまに声を掛けることもあるが、それを理由にマネージャーの仕事を放棄して選手のような顔をするのはやはり間違っていると思う。

花織は首を振った。何を考えているんだろう、私がサッカーの練習をするのは選手になるためじゃない。もちろん、サッカーを知ることでマネージャーとしてのメンタルケアができるという理由はあるけれど、一番の理由はそうじゃなかったはずだ。

風丸がサッカーをするから。

風丸がサッカーのフィールドにいるから。

今彼が走る場所が、サッカーのフィールドだから。それ以外に理由なんてなかったはずだ。

花織は外へ出た。身を切るような寒さが花織の身体を包む。やはり寒いのは嫌いだと思った。急ぎ足でグラウンドへ向かおうとすればあたりから声が聞こえた。男の子の、聞き覚えのある声のような気がした。

見つかると不味いことになる。花織は咄嗟にキャラバンの陰に隠れた。そして息を潜めて人の声がどこから聞こえたのかを探る。どうやら声はキャラバンの上から聞こえてきたようだった。

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